4.会社設立

story12カゴ、台車、車輪、ストッパ、ハンドルなど主要部品の試作が終わるまでに3年ほどかかりました。3人の子供を乳母車で育てた経験をベースに、良いものができたという手応えを感じて「これなら理解してくれる人がきっといるはず」と思い製品化することにしました。
もっとも社会的に通用する製品にするには専門家の力が必要です。アルミ鋳造、ゴム・プラスチック成形、パイプ加工、板金・プレス加工、溶接、ステンレス加工、縫製、などで協力してくれた会社は30社以上に及びました。日本には頼りになる会社がたくさんあるのでした。

会社を設立したのは1994年4月。実際に製造販売を始めたのは翌1995年の春からです。

「この子の誕生祝いに特製乳母車を作ってあげよう」と言い出してから丸4年が経っていました。当の次男はすでに幼稚園に通うようになっていて、結局、一度もプスプスに乗る機会はありませんでした(シンペイ、ゴメンネ)。

迷った社名・東京乳母車

story13会社の名前は当初「ベルシューズ」にしようと考えていました。フランス語で「子守唄」という意味です。優しい感じがしていいんじゃないかと思いハンコまで作りました。
しかし法人登記の直前になって迷いが生じます。無名の会社が「ベルシューズといいます。新しいタイプの乳母車を製造販売します」といっても誰も見向きもしないだろうと気がついたのです。もっと分かりやすく、初めての人にも覚えてもらえるような名前にしなければ・・。

いろいろ考えて「東京乳母車」にしました。直球・ヘタウマ路線です。

この社名、周囲の意見は散々でした。「なんじゃそれ」、「ずいぶん古めかしい名前ですね」、「はっきりいってダサイ」、「乳母車なんて死語だよ」といった調子で、8割以上が否定派です。ただ、ごく少数ですが「なかなかいいネーミングですよ」といってくれる人もいました。広告会社のM氏、経営コンサルタントのI氏などです。「8割の人が拒否反応を示すということは、見方を変えればそれだけインパクトがあるということだ。これで行こう」と決めました。

会社設立から20年経った今、「古臭い名前だ」という人は減ってきました。story14

「Tokyo Ubaguruma」 という英語表記にするとちょっといい感じです。なかには「今どき乳母車とは。とんがってますね」という人さえ出てきました。変われば変わるものです。♪ 回る回るよ 時代は回る。

「プスプス」を商標登録

次は商品名です。フランス語の辞書で育児に関係しそうな言葉を探していたら「poussse-pousse」という語を見つけました。「poussse-pousse」は英語でいうと「push-push」→「押す-押す → 乳母車」という意味の幼児語です。同じ音の繰り返しで覚えやすく、可愛いらしい。これは迷うことなく商品名として採用、商標出願を決めました。 一般に、「普通名称の登録は不可」という規定があります。本来であれば乳母車そのものを意味する言葉である「プスプス」を登録することはできません。特許庁に相談してみたところ、「プスプスがフランス語で、乳母車という意味があるなんてことを知っている人はほとんどいないでしょう。審査官は普通名称ではないと判断するだろうと思いますよ」といわれ、無事に登録できました。

いろいろな受賞

製品発表後、「プスプス」は、いろいろな賞を受賞しました。

最初は「東京都中小企業優良商品」という中小企業の新製品の品評会で第1位になりました(1996)。講評は「ありそうでなかった製品」というものです。「ちゃんと分かってくれたんだ」と、うれしかったです。

「東京発明展」では、振動を8か所のサスペンションに分散させる機構(疑似4輪独立懸架)で奨励賞を受賞(1996)しました。地味な発明ですがこちらも分かってもらえました。

賞とは別にベンチャー企業の補助金申請で各種の認定を受けることができました。ほとんどすべて、友人で経営コンサルタントの石渡草平氏のアドバイスによるものです。創業期はお金がかかりますから補助金には助けられました。

だいぶ後になって、「キッズデザイン賞」(2011)を受賞。「レトロ感を感じさせるベビーカーで、基本的な機能以外をあえて排除し意匠性にこだわった潔さがよい。セパレート式のバスケットは室内のゆりかごとしても使用可能で長く愛着を持って使える育児用品となるだろう」という講評を得ました。ヤッタネ!

ハガキで注文受付

会社作りを考え始めた頃、販売は通信販売
メインにしようと早い段階で決めていました。ターゲットがはっきりしているので、赤ちゃん雑誌に広告を出せば広くアピールできます。マタニティー雑誌の読者はほぼ100%が妊婦ですから広告の効率も良い。雑誌広告を見た読者にカタログを郵送し、電話やハガキで注文を受けるという方法で始めました。

最初の雑誌広告は、味付け海苔ぐらいの大きさで目立ちません。それでもぽつぽつと注文が入るようになりました。初めて注文ハガキが来た時のうれしさと緊張の入り混じった感情を今でも覚えています。

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