命を運ぶ乳母車

助産師・浅井貴子

昨今の赤ちゃんを見ていると、お腹が一杯、おむつも綺麗・・・でも置くとすぐ泣く、反り返りが強い、、など不定愁訴を抱えたお子さんが実に多いと感じています。
様々な環境の変化、夜寝にくい世の中、環境ホルモン、電磁波やブルーライトなどとても刺激が多い時代に生まれています。四季の移り変わり、小鳥のさえずり、木の葉のそよぐ音・・・自然な音がかき消され、合理的、簡便性が追及され人として忘れてはいけないものが二の次、三の次になってしまっていてとても寂しく思います。
私がこの乳母車を推奨する理由の一つとして「赤ちゃんの発育、発達」を促す、理にかなった作られ方をされています。これを一つ一つご紹介していきたいと思います。

「脱力」が大事 

まず子宮の中の胎児の時に、羊水という無重力の中で「リラックス」と「自発運動(胎動)」を修得しています。生まれた後もこの体内記憶を想い出させる事で質のよい睡眠が取れ、ぐずりにくいしっかりとママやパパの事を信頼できるお子さんになります。
今の生活は「頑張る」事が当たり前になっていて、脱力するという動作がとても難しくなっています。「脱力」のとてもよい見本は寝ている赤ちゃんです。大人もソファーや椅子でうたた寝をする事がありますが、座位による余分な筋肉の使われ方をするせいか熟睡できなかったり、どこかしら背中や肩が痛かったりするのは皆さんも記憶にあると思います。背中、下肢が脱力できるのは、「心地よい振動」と「適度な柔らかさがあるフラットな平面」なのです。一般的なベビーカーは座位で紐でくくられていますので、寝ていてもあまりリラックスされにくい状況下で実は赤ちゃんは寝ているのです。

声をかけてくれるのがいい
次に生まれて泣くという行動で「呼吸のトレーニング」をしています。呼吸は一日2万回すると言われています。
腹筋や横隔膜を使う事で体幹トレーニング(コアトレ)を知らず知らずのうちにしています。今の親御さんは外出時だけでなく家にいても「泣いたら困る」「泣かれたらどうしよう」と心配し、今は泣きやませのアプリが出るほどの時代です。お家だとバウンサーやメリーや抱っこなどであやしますが、乳母車だとそのままお家に入れる事が出来、お洗濯を干す時、お台所をしながら、ちょっと取っ手を動かす事で赤ちゃんは穏やかに泣きやみます。素敵な乳母車があると色々な人が覗いてくれて「どうしたのかな?」「どんな赤ちゃんが泣いているの?」とママに声をかけてくれるのも、育児不安の多い中、子育てするママがとても安心するひとときになるでしょう。今は忘れかけている「地域の目の中で赤ちゃんは育つ」事がこの乳母車だと実現出来ますね。本当に声をかけてくれたりする事が多いので、赤ちゃんの人見知りも少なくなることでしょう。

「はいはい」は大切な運動
3~4ヶ月になると、「首が座り」そして5~6ヶ月で「寝返り」ができるようになります。この二つの動作は身体の正中感覚である「バランス感覚」と重力拮抗の伸展筋の発達になります。いよいよねんねの赤ちゃんから動き出す時期への移行期になります。

色々な物にも興味を持ってくる時期で手の力もついてくるようになると「はいはい」につながります。
人生の身体の動きの中で一番大切な運動が「はいはい」で体幹と四肢のコントロール、手足の連動性のトレーニングのとても大事な時期になります。今は「はいはい」をせずに座位で移動したり、座位からすぐつかまり立ちをしてしまうお子さんが増えてきてとても懸念する所であります。はいはいで脳と脊髄の通りがよくなり、運動神経の発達が良くなります。1歳すぎてもはいはいをしているお子さんはかけっこや段差の上り下りがとても上手になってきます。

お腹で「コアトレーニング」
首が座るとすぐ簡易型椅子に座らされていると、はいはいの機会を失う事になり、せっかくの運動機能向上のチャンスを失う事になります。たしかにはいはいは動き回るので、親御さんにとっては目が離せなくなり大変な事も多くなりますが、自立への第一歩だと思い広々したスペースで動き回らせてあげてください。乳母車のよい所は振動の中の移動を体験することにより、腹ばい、座位などでしっかりお腹の力で動かないよう踏ん張る事が出来ます。振動がお腹に伝わる事でよいコアトレーニングになります。

「つかまり立ち」で一生の宝物を養える
最後に「つかまり立ち~歩く」という最終章になります。つかまり立ちをする事で足裏の筋肉を使う、重たい頭を脊柱で支えるバランス感覚のトレーニングになります。最後に手を離して歩く事で全身の筋肉の運動のリンクが出来るようになります。 乳母車だと、坂道やがたがた道でも柵をしっかりつかまっていないと転倒してしまうので、下半身でしっかり踏ん張る事により下肢の筋力UPになり、手の握力の向上にも役立ちます。今は少しの距離のお散歩でも抱っこをせがまれる、転ぶとすぐ手を骨折してしまったり頭から地面に落ちてしまうお子さんも多いと聞きます。
四肢の運動のリンクが出来ると、小学生になってもじっと座っていられる、しっかり歩く事が出来る、人間の運動機能の基本的な事が無理なく出来るようになります。
しっかり歩く事が出来る事を覚える事は、身体のゆがみを治す一つのコンディショニグになり、一生の宝物と言っても過言ではないでしょう。

“物”ではなく”命”を運ぶ乳母車
親御さんの移動の手段としての機能的な面とお子さんの一生の発育、発達を両方兼ね備えている乳母車、、、物ではなく命と将来の発達を運べるのは乳母車なのではないでしょうか?

人生の最初の大切な1~2年間、、じっくりお子さんの眼や身体の動きを見て行って欲しいと切に思います。